紫色のクオリア うえお久光

紫色のクオリア (電撃文庫)

紫色のクオリア (電撃文庫)

「傑作だ。これは凄い。SF界でも話題になってるらしい」と前評判が高すぎてかなりハードル上がった状態で読んだ。

 結果。まちがいなく傑作だった。これはラノベの範疇をはるかに超えている。本格SFの骨格を確かに備えている。

 人間がロボットに見える紫(ゆかり)。これはクオリアの問題を扱ったSFなのだ。じゃあ、色んな人間がロボットに見える。これの目新しさだけでみせる話なのか。否。それだけじゃあ済まないところがこの作品の凄いところなのだ。

 紫はある組織に殺されてしまう。それを信じられないのが波濤マナブ(女性です。みため男性的だけど)。殺人鬼に切られた左腕を紫に直してもらったマナブ。その左腕を使って多元宇宙で紫を救おうとするが……?

 結末はあえて書かない。
 ただ、
 運命は自分でしか変えられない。誰かの運命を変えようなんてなんと不遜で傲慢な考え方であることか。という事に気づかせてくれた本書は間違いなく傑作SFなのだ。これぞセンスオブワンダー。