『キリンヤガ』

キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)

キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)

主人公を単なるアホで傲慢な老人と見るか、それとも変わらぬ美しさ、価値観を追い求める、一種の求道者と見るか。

それで随分印象は違ってくるだろうなぁ、と思った。

私には、アホだけどちょっと寂しい老人に見えた。


だって、初めはムカつくだけの老人だったけど、後になって自分のユートピアが壊れていくのに
ムキになって反抗する姿は、もうなんていうか哀れ。

哀れだけど、私だって勝手に理想を追い求めて、それが手に入らないからって勝手にキレてるのかも。




あれだ、童貞が好きな女性に「かくあれかし」と勝手にキャラ付けして、そっから一歩でも外れると「君は私の追い求める女性ではなかった! ふざけるな!」とキレる感じに似ている。

でも「自分に尽くしてくれて、他の男には一切なびかないで、処女で、胸がでかくて、顔がかわいくて、なんでも言うこと聞く女」なんて居ない。当たり前だけど。

でも、そんな非実在の女性を永遠に追い求めるのが、男の性なのかもしれん。
だとしたら、主人公の事をバカにできないかも。

そして結局、ユートピアは手に入らない。