屋根裏に誰かいるんですよ。

 独居老人などにしばしば見られる『幻の同居人』の妄想について、かつての座敷牢や、江戸川乱歩の小説、新耳袋などを使って解説していく。

 医者のくせにふざけている、と思われそうだが、この『幻の同居人』の妄想を訴える人は、特に脳に器質的な問題があるわけでもなく、ごく普通の人が多いのだという。


 自分で自活していることも多いが、度々、「屋根裏に誰かがひそんでいて、家のものを盗んでいく」などと訴えて周囲を困らせる。


 

 誰にでも起こりうる妄想のようだ。


 それにしても、『幻の同居人』のすみかのほとんどが、軒下ではなく屋根裏だというのが面白い。


 軒下では、穴を開けても部屋全体を見回すことができないから「見られている」という感覚に乏しいためでないか? と筆者は推測している。


 確かに、床下に潜むものは屋根裏に潜むものに比べたら、怖くないかもしれない。

床下仙人 (祥伝社文庫)

床下仙人 (祥伝社文庫)

 これも全然ホラーじゃないしなぁ。





春日武彦】【精神医学と日常の間】