私たちはなぜ狂わずにいるのか

私たちはなぜ狂わずにいるのか (新潮OH!文庫)

私たちはなぜ狂わずにいるのか (新潮OH!文庫)

1章 狂気という「物語」について―ミステリアスなベールの向う側にあるもの
2章 狂気を診る―精神科医は患者の内面を知り得るか
3章 狂気を治療する―そこで何が為されているのか
4章 精神科医とは何者か―救済者か、それとも狂気の博物学者か
5章 狂気を選び取ることは出来るのか―精神の可能性としての狂気を検証する
6章 だから私たちは狂わない

 正気と狂気のくっきりとした境界なんてないし、多くの人が求める狂気の「ロマンティックさ」などほとんど存在しない。

 狂気の多くは、非常に類型的だ。



 人は物語を求めたがる。親族が精神を病んだのは、遺伝的なものでも、育て方が悪かったわけでもない。

 「受験に失敗したのが、きっかけで」、「子育てにつかれたから」


 客観的に正しいものも、まったく見当はずれの物語もある。


 それでも、そのストーリーを精神科医が否定することは基本的にない。少なからず、そこには癒しがある。
 らしい。



 あの頃何かが一度こわれたっけな
 
 蛇口だったか 世界だったか わたしだったか



小長谷清実】【春日武彦