風立ちぬ感想二回目

メンズデーだったので行ってきました。



やっぱり、二回目見ると細かいところまで気づく。


まず、菜穂子は思ったよりも肉食系というか、二郎に好かれるために色々と策を講じてるだなぁと。

軽井沢で、二郎に会えるようにパラソルを仕掛けてみたり、自分から山を降りて来るのも、二郎にきれいな自分を見て欲しいがためで、なかなか考えて動いてると思う。





二郎はやっぱりはじめは菜穂子のお手伝いさんのことを好きだったようだ。はじめに追いかけているのはやはりお手伝いさんの背中だった。確認した。

それでもしれっと、菜穂子に会った時から好きだと言っている。

鈍感というよりも、本当に邪気がない嘘なんだろう。





で、二郎はやっぱり美しいものが好きで、菜穂子のことも外見が美しいから好きなだけだ。これは、悲しいくらいわかる。
まだ面識がない菜穂子を目で追うシーンだったり、様々なシーンで「この人はきれいな人が好きなんだなぁ」と思った。
しかし、本当に「きれいだよ」としか言わないんだなぁ。
あの「きれいだよ」は深読みする必要はなくて、「きれいだから好き」というだけなんだな。

零戦は兵器だって言われても「それでもボクはきれいな世界が見たい」といってきれいな飛行機作りに没頭しているし。
二郎にとって「美」だけが、重要で、他のことはどうでも良いみたい。




でも、二郎も結婚を決意するし、菜穂子さんの事は好きなんだな。

ただ、それが普通よりちょっと変わってるというか、美しさに重点をおきすぎているだけなんだ。



菜穂子の美ばかり見て、菜穂子の気持ちには無頓着。

サナトリウムにいる菜穂子の手紙には「お元気ですか。心配しています」という短い文章しかない。他は「ボクは今〜」と仕事の内容ばっかり書いてあるみたい。

二郎は遠くに行ってしまったきれいな人より、手元にあるきれいな飛行機が好きで好きで仕方がなかったんだろう。

菜穂子さんは、好きな人が自分のことを全然見ていないって手紙を読んで知って、山を降りようって思ったんだろうなぁ。



そして、菜穂子はきれいな時期だけ二郎のそばにいる。
好きな人が、自分の美しさにしか興味がないとわかった上で、駆けつけるんだからすごい愛だと思う。






それで駆けつけた駅のホームでも二郎は菜穂子の体調を気遣うでもなく「すれ違いにならなくて良かった。見つからなかったらどうしようかと」みたいなことを言っている。
どこまでもズレているというか…。


なにかを得るには何かを捨てなきゃいけないっていうけど、菜穂子は好きな人といるために命を犠牲にしたし、
二郎は、ふたつの美しいもの(飛行機とか菜穂子)間で揺れる。


血を吐いたという知らせを受けて、電車で移動するシーンは、飛行機よりも菜穂子のことが大切だということを表しているのかと思ったが、今回見なおして

好きな人を心配する気持ちに加えて、好きな人が大変なときなのに、まだ飛行機の計算を続けている自分の矛盾に、なんというか情けないような気持ちになったのではないかと思った。
しかし、毎回このシーンで泣きそうになる。



あの、菜穂子が去った後で、二郎はどういう気持ちになったのだろう。きれいな菜穂子は死んで、綺麗な零戦だけが残って。



二回目見終わって、「天才成年と、清純な女性のラブストーリー+零戦プロジェクトX」って感じだったのが
「みんな何かを犠牲にして、それをわかった上で、自分のエゴを突き通す映画」と変わった。

だから、あの夫婦は、いびつなんだけど美しいんだなぁと。



考えて見れば、「仕事をするために、女房をもらう。これも矛盾だ」とか、「飛行機ひとつ作る金があれば、日本国中の子供たちにご飯食べさせることができる」だとか、「美しいってだけで、人殺しの道具を作る(本人たちはいい飛行機を作りたいからと言っていたが、平気を作っていることには無自覚ではない)」とかすごい矛盾だらけの映画だったなぁと。




あと、二郎も菜穂子も特権階級にいるのに、それには結構無自覚なのが、すごいリアルだった。さすが宮崎駿。だてにエリート街道歩んでない。


あと、効果音全部人間の声って言ってたけど、何箇所かどう考えても人間の声には思えないところがあった。
どうやってやったんだろう…。